知見の内容
背景
2021年3月3日に国立感染症研究所が国際データベースGISAIDに公開したSARS-CoV-2ゲノム配列データと、慶應義塾大学グループが蓄積して既にGISAIDに公開している配列を比較し、以下の知見を得た。
- E484K変異は、いわゆる南アフリカで発見された変異(501Y.V2)株、ブラジルで確認された変異株(501Y.V3)などに存在し、従来株よりも免疫やワクチンの効果を低下させる可能性が指摘されている(※1)。
- このほかに「N501Y変異はないがE484K変異のある変異株」が国内でも検出されているが、海外株に類似しており、いずれも海外より流入したと考えられてきた(※2)。
知見
- 昨年から主に日本のみで流行しているB.1.1.214株にE484Kが加わったウィルス株が2検体、存在した。
- 国立感染症研究所のデータによれば1検体(➀GISAID Virus name: hCoV-19/Japan/PG-19986/2020)は、2020年の8月19日に採取され、もう1検体(②GISAID Virus name:hCoV-19/Japan/PG-16810/2020)は2020年の12月23日に採取されたものである。
- 慶應義塾大学グループにより確認されていたB.1.1.214に属する2つの株(➀GISAID Virus name:hCoV-19/Japan/Donner66/2020 2020年7月24日、②GISAID Virus name: hCoV-19/Japan/Donner231/2020 2020年12月3日)と、今回確認された2つの株はE484K変異以外の配列が類似しており、E484K変異が日本国内で発生したことが強く示唆された。
考察
- 世界的に注目されているE484Kが国内で自然発生したという知見は、ウィルス変異株の全国的な監視の必要性を裏付ける。
- 今回、同定されたB.1.1.214株にE484Kが加わったウィルス株は、2020年8月および12月に採取されたものであり、その後は検出されていないので、現時点で広く流行している可能性は低い。
(※1) 厚生労働省新型コロナウィルス感染症対策推進本部
「新型コロナウィルス感染症(変異株)への対応」より
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000748323.pdf(※2) 国立感染症研究所の2021年2月19日段階の発表
「国内の主流2系統(B.1.1.284およびB.1.1.214)からE484K変異を獲得した株は現在のところ検出されていない」とされる
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2488-idsc/iasr-news/10188-493p02.html
「新型コロナウィルス感染症(変異株)への対応」より
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000748323.pdf(※2) 国立感染症研究所の2021年2月19日段階の発表
「国内の主流2系統(B.1.1.284およびB.1.1.214)からE484K変異を獲得した株は現在のところ検出されていない」とされる
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2488-idsc/iasr-news/10188-493p02.html