スパイクタンパクの484番目の場所(アミノ酸)にEからKに変わる変異があるE484K変異は、免疫逃避変異ではないかと懸念されている
(British Medical Journal https://www.bmj.com/content/372/bmj.n359.full)
少なくとも試験管内の実験では、変異のないウィルスのスパイクタンパクに対して作られた中和抗体はE484K変異のあるウィルスを抑える効果が弱くなっているとの報告がある。
このためE484K変異は、米国CDC(疾病対策予防センター)により”Variant-of-interest” 「注目すべき変異」に指定されている。
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/cases-updates/variant-surveillance/variant-info.html
R.1株と呼ばれるスパイクタンパクにE484K変異を有する株が国内で徐々に増加している
国際ウィルスゲノムデータベースGISAIDに日本から登録されているウィルスゲノムシーケンスを解析すると、2021年の1月以降R.1株が徐々に増えている。慶應大学を中心とする研究グループの3病院(東京都・神奈川県・埼玉県)におけるウィルスゲノムシーケンスの結果、関東地域においても、1月以降R.1株が徐々に増えている(下図)。
免疫逃避変異としてのE484Kの意義に関する考察
理論的には、一度新型コロナウィルスに罹った人でも、E484K変異ウィルスには再感染するあるいは現在世界で使われているワクチンがE484K変異ウィルスに対する予防効果が低くなるなどの懸念があるが、今のところそのような臨床データは示されていない。今後の流行の動向を注視する必要がある。
国際的な観点からのR.1株の由来は現在のところ不明である
われわれは2021年3月5日に国内で発生したと考えられるE484K変異を有するウィルス株について公表したが、今般、都内での増加が懸念されているR.1株はこの国内発生株とは異なるウィルス株である。