オミクロン株は変異の違いにより、いくつかの亜種に分類されている。日本では「BA.1」と呼ばれる亜種が主流だが、「BA.1」より感染力が高いステルスオミクロンと呼ばれる「BA.2」の増加が懸念されている。
「ステルス」とは“隠密”、”探知できない“という意味である。ステルス戦闘機と言えばイメージが湧くであろう。
ヨーロッパやアフリカ等では、オミクロン株かデルタ株かの簡易的な判定を、オミクロン株に特異的なスパイクタンパク質の欠失(69_70番目のアミノ酸の欠失)の有無確認で行っている。ところが「BA.2」にはこの欠失がなく(資料1,2)、BA.2に感染していたとしてもオミクロン株と同定されない。そのためBA.2は「ステルスオミクロン」と呼ばれている。
⒈オミクロン株の変異について
- スパイクタンパク質にの多数の変異(特にN末端ドメイン(NTD)および受容体結合ドメイン(RBD))
- NTDの欠失は感染力の増加や中和抗体からの逃避に関連するとの報告あり(Meng B, et al., Cell Reports, 2021, McCallum M et al., Cell, 2021,McCarthy K.R, et al., Science, 2021)
- S1-S2furin切断部位付近の変異により切断増加の可能性(H655Y,N679K,P681H)(Papanikolaou V, et al., Gene, 2022)
- 免疫回避に関連すると思われる変異あり(E484A)
- ACE2への結合親和性が上昇する変異多数(K417N,E484A,Q493R,Q498R,N501Y,Y505Hなど)
- Nsp6の欠失が宿主の免役応答を回避する可能性(Benvenuto D, et al., J. Infect., 2020)
- Nタンパク質の変異は感染性を高める可能性(R203K,G204R) (Wu H, et al., Cell Host Microbe, 2021)
- ステルスオミクロン(BA.2)は、スパイクタンパク質NTDの欠失や変異がいわゆるオミクロン(BA.1)と大きく異なっている。また、Nsp4の変異が多い。(Nsp4はウイルス複製に関わる)
オミクロン株のBA.1とBA.2は、総変異数が多い割には共通の変異が少ない。系統樹を辿ると2021年2~3月頃に分岐したと推測される(資料3)。共通の祖先の株は国際データベース上には見つかっておらず、それぞれ異なる経路で変異を獲得した株である可能性も考えられる。